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(1)押出形材の製作範囲
船体構造用の外接円350mm前後を超える大型押出形材は、アルミニウム圧延業7社と同製錬業5社の共同出資による軽金属押出開発(株)の9,500トン複動式油圧押出機によって生産されており、一方、アングル、チャンネル、フラットバー、バルブプレートその他の小型押出形材は各アルミニウム材料製造会社の設備によっている。
アルミニウム合金は押出加工性が比較的良好であると称しても、合金系によって断面形状、肉厚等に制約を受ける。これらについての自由度は、内装等に用いる6063(Al−0.65%Mg−0.4%Si)合金が最も高く、6N01合金もほぼ同等であり、高Mg量の5083合金等はかなり劣る。船体構造用大型押出形材の製作範囲11)は表3.7にソリッド(solid)形材、表3.8にホロー(hollow)形材、表3.9に角コンテナー(内法:幅700m×高さ280m)を用いた大型広幅押出形材‘πセクション’の各製作範囲をそれぞれ示す。また、表3.10は小型押出形材の製作範囲の一例である。
押出形材は、材料製造会社の技術資料等に掲載されている既存の断面形状のものを使用することが望ましいが、鋼材と異なり標準化されたものはほとんどない。新しく断面形状を設計したときには単純なものは別として、ボイド(void)部を持つ場合にはダイスの強度よりみた形状的な制約もあり、また、ホロー形材では材質による製作の可否と寸法精度がある。それらに伴う多少の変更とダイス費が関係するので、材料製造会社の押出技術者と打合わせることが必要となる。
(2)断面形状設計における留意事項
押出形材断面形状の設計に際して、考慮することが望ましい事項を以下に述べる。
?@溶接トーチのノズル径に対する考慮
部材の接合はミグ溶接が主となるため、溶接トーチのノズル径の大きさから「狭い箇所の溶接ができない」という問題を現場で起こしやすい。したがって、詳細設計に当たっては部材の組立順序を考慮しておくことは当然であるが、押出形材の断面寸法上からの制約を知っておく必要がある。
図3.3は、一般に使用されているミグ半自動溶接トーチのノズル寸法及ひずみ肉溶接時の姿勢(ノズル角度45°)からバルブプレートのフランジ幅(又は丁形材の片側フランジ幅、いずれもウェブ面からの距離)の制限を示した図である。高さ50mのバルブプレートの場合、ウェブ面からのフランジ幅は約10mm程度が作業性からみた限界である。溶接作業上、「送付けアングルや丁形材の片側フランジ幅は、ウェブ高さの1.5分の1以内にせよ」という要求がロイド船級協会の規則にあるが、寸法の小さい小型船用部材に対しては不十分な場合もあるので注意が必要となる。図3.4は、小型船用防橈材の改良例を示したもので、(a)のL形から右側の形材に移るにつれてフランジ幅が小さくなり、ウェブ端をすみ肉溶接しやすいように配慮されている。

 

 

 

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